XI. The State of Grace
恩寵の状態
1. The Holy Spirit will always guide you truly, because your joy is his.
- guide [gáid] : 「〜を導く、案内する」
- truly [trúːli] : 「本当に、真に、正確に」
❖ "The Holy Spirit will ~ "「ホーリー・スピリットは常に、あなたを正しい方向へ導いてくれるだろう」。"because your joy ~ "「なぜなら、あなたの喜びはホーリー・スピリットの喜びでもあるからだ」。もちろん、あなたの喜びは神の喜びでもある。
This is his will for everyone because he speaks for the Kingdom of God, which is joy.
- speak for : 「〜の代弁をする、〜を代表する」
❖ "This is his will ~ "「これは、すべて人々に対するホーリー・スピリットの意思である」。"because he speaks ~ "「なぜならば、ホーリー・スピリットは神の王国に代わって話をしているのであって、」"which is joy"「その王国こそ、喜びであるからだ」。神の王国とは、叡智に満ちた神の世界、神の真実、すなわち神そのもの。天の王国は神の喜びで満たされている。ホーリー・スピリットは、神の喜びに満ちた意志を神に代わってあなたに伝えている。
Following him is therefore the easiest thing in the world, and the only thing that is easy, because it is not of the world.
- follow [fɑ́lou] : 「〜の後について行く」
- easy [íːzi] : 「やさしい、容易な、簡単な」
❖ "Following him is ~ "「ホーリー・スピリットについて行くことは、したがって、この世の中で一番簡単なことである」。" and the only ~ "「しかも、唯一簡単なことである」。"because it is not ~ "「なぜならば、ホーリー・スピリットについて行くことは、この世界のことではないからだ」。幻想のこの世界の出来事ではなく、神の世界でのことだから。変化流動する苦と痛みの道をたった一人で歩むのではなく、永遠不変の真実の一本道をホーリー・スピリットの導きにしたがって歩いて行くのだから、一番簡単なことだ。
It is therefore natural. The world goes against your nature, being out of accord with God's laws.
- natural [nǽtʃərəl] : 「自然の、普通の」
- go against : 「逆らう、反対する」
- nature [néitʃər] : 「性質、性分、本性」
- out of accord with : 「〜と調和しない、〜に合わない」
- law [lɔ́ː] : 「法、法律、法規」
❖ "It is therefore ~ "「したがって、それは自然なことである」。"The world goes ~ "「(むしろ、)この世界はあなたの性質に反する」。"being out of ~ "分詞構文、理由、「この世界は神の法と調和しないからだ」。この幻想世界で生きていくことの方が不自然である。
The world perceives orders of difficulty in everything. This is because the ego perceives nothing as wholly desirable.
- perceive [pərsíːv] : 「知覚する、〜に気付く」
- order [ɔ́ːrdər] : 「順序、順位、序列」
- difficulty [dífikʌ̀lti] : 「困難、難事」
- wholly [hóulli] : 「完全に、全く、全体として」
- desirable [dizáiərəbl] : 「望ましい、好ましい」
❖ "The world perceives ~ "「この世界は、すべてにおいて、難しさの序列を知覚する」。簡単なことから難しいことまで、難易の序列をつける、ということ。"This is because ~ "「これは、エゴが、完全に望ましいものとして何も知覚しようとしないからだ」。奇跡には、難しさの序列はない、ということを思い出そう。イエスは山を動かすことも死人を生き返らすことも可能だと言った。奇跡には、難しさの序列がないからだ。しかし、この世界はそのような知覚のし方はしない。山を動かすことは物理的に不可能だと知覚し、死人が生き返るとは死んでいなかっただけだと知覚する。しかし、もし、この世界が単なる幻想に過ぎなかったら、山も死人も幻想であり、山が動くことも死人が生き返ることも、実に自然で簡単なことかもしれない。では、なぜ、私達は奇跡に難しさを感じてしまうのか? それが、"This is because the ego ~ "に書かれてある。エゴは、完全に望ましいものとして、ものを知覚することがないからだ。真実なることを知りたい、真実なるものを見たいという思いがないからだ。エゴの世界の成り立ちを考えれば理解できよう。私達の心は、神からの分離という罪の意識と神の報復への恐れから逃避するために、自己を乖離してエゴという別人を仕立て投影し、外部に幻想のこの世界を打ち立てた。つまり、そこには真実を隠ぺいする動機はあっても、真実を望ましいものとして見つめようとする動機は一切ない。幻想と錯覚の中に埋没し、真実の世界における奇跡の容易さを完全に忘れ去ってしまった。幻想の世界から見れば奇跡であっても、しかし、神の真実の世界から見れば、それは極く自然な(natural)なことなのである。
By demonstrating to yourself there is no order of difficulty in miracles, you will convince yourself that, in your natural state, there is no difficulty at all because it is a state of grace.
- demonstrate [démənstrèit] : 「実証する、実演する」
- convince [kənvíns] : 「確信させる、納得させる」
- state [stéit] : 「状態、形勢、状況」
- grace [gréis] : 「恩寵、慈悲、恩恵」
❖ "By demonstrating to ~ "「奇跡には難しさの序列はないと、自分自身に明示することで、あなたはthat以下を自分に確信させるだろう」。"in your natural ~ "「あなたが極く自然な状態でいるとき、」"there is no ~ "「まったく、難しさというものがない」と確信させるであろう。"because it is ~ "「なぜなら、それが、恩寵の状態だからである」。"grace"の日本語訳は難しい。仏教徒なら「慈悲」と訳した方がピンとくるであろうし、キリスト教徒なら「神の愛」とした方が理解しやすいかもしれない。人それぞれに、自分にぴったりする訳語を探してみるのも、ACIMを原語で読む楽しさの一つである。
余談になるが、この精読において、"ego"を自我と、"Holy Spirit"を聖霊と訳さないのは、私達が日常使っている自我や聖霊という概念とACIMが伝える概念が異なっていると思うからだ。しかし、ACIMが伝える概念を誤りなくとらえているなら、自我や聖霊という訳語を使ってもまったく問題ない。何なら、"Holy Spirit"を観音さんと訳してもいいのだ。私達は翻訳家ではなく、学習者なのだから。
2. Grace is the natural state of every Son of God. When he is not in a state of grace, he is out of his natural environment and does not function well.
- environment [enváiərənmənt] : 「環境、情勢」
- function [fʌ́ŋkʃən] : 「働く、機能する」
❖ "Grace is the natural ~ "「恩寵とは、すべての神の子の自然な状態である」。神の愛に包み込まれている状態が、あなたの一番自然な状態だ。"When he is not ~ "「神の子が恩寵の状態にいないときは、」"he is out of ~ "「彼は自然な環境から外れて、その機能を十分に発揮できないことになる」。
Everything he does becomes a strain, because he was not created for the environment that he has made.
- strain [stréin] : 「緊張、精神的緊張」
❖ "Everything he does ~ "「恩寵の状態にいない神の子がなすことはすべて、緊張のもとになる」。"because he was ~ "「なぜなら、彼は、彼が自分で作った環境に適合するようには創造されなかったからである」。神は神の子を実相世界に適合するように創造したのであって、神の子が勝手に偽創造した幻想世界に適合するようにはしなかった。神は幻想と一切の関わりをもたない。
He therefore cannot adapt to it, nor can he adapt it to him. There is no point in trying.
- adapt [ədǽpt] : 「適応する、順応する」
- adapt to : 「〜に適合する、〜に順応する」
- adapt [ədǽpt] : 「〜を適合させる、順応させる」
- no point : 「意味がないこと」
❖ "He therefore cannot ~ "「したがって、神の子は、恩寵のない状態に適応することは出来ないし、」"nor can he adapt ~ "「恩寵のない状態を彼に適合させることも出来ない」。"There is no point ~ "「やってみても意味がない」。幻想を実相に持ち込むことは不可能だ。意味がないのだ。
A Son of God is happy only when he knows he is with God.
- happy [hǽpi] : 「幸福な、幸せな」
❖ "A Son of God is ~ "「神の子は、彼が神と共にいると知っているときだけ、幸福である」。それが一番自然だからだ。したがって、幸せとは一番自然な状態である。
That is the only environment in which he will not experience strain, because that is where he belongs.
- experience [ikspíəriəns] : 「〜を経験する、〜を体験する」
- belong [bilɔ́ːŋ] : 「属する、所属する」
❖ "That is the only ~ "「それこそが、神の子が緊張を経験せずにすむ唯一の環境である」。"because that is ~ "「なぜなら、そこは、彼の属している所だからだ」。神の子は実相世界に属しているのであって、神から分離して幻想世界に生きているように感じるのは錯覚だ。その錯覚が緊張感を生む。緊張感が葛藤を生み出し、心の幸せを阻害する。
It is also the only environment that is worthy of him, because his own worth is beyond anything he can make.
- worthy [wə́ːrði] : 「〜に値する、価値のある」
- worth [wə́ːrθ] : 「価値、財産」
- beyond [bijɑ́nd] : 「〜の向こう側に、〜を越えて」
❖ "It is also ~ "「それはまた、神の子にとって価値のある唯一の環境である」。"because his own ~ "「なぜなら、神の子自身の価値は、彼が作る何ものにも勝からである」。